まず最初にですが、僕は「アンナチュラル」を見ていません。しかし、この曲はしっかりと記憶していますし、アンナチュラルの曲ということもわかります。どこで接触しているか。それは。TVerを見ている途中の番宣CMです。
この数秒の間にしっかりと耳に残っているのです。
この曲はなんでこんなに耳に残るのでしょうか。を勝手に考察してみました。
- 耳に残る曲の条件とは。
- 果たして「Lemon」はそうなっているか?
- 本当に「予測しやすい=耳に残る」か?
- テレビ時代の曲作りと音楽番組
- ネット時代の音楽大量消費と趣味嗜好特化傾向
- そこで育った人たちが、今やメジャーシーンへ。
- 一言で言うならば、
耳に残る曲の条件とは。
このあたりの情報をひろうと、大きくポイントは3つのようです。
- 音の高さが階段状に上下する
- メロディーを繰り返している
- 次に来る音の予測しやすさ
つまり、音がウロウロすることで注目を引き、メロディーを繰り返すことで刷り込む。そして、そのメロディーが次の音や流れを予測しやすいことで、繰り返しても違和感なく気持ちよく受け取ってもらえる。これが耳に残る音楽の条件なのかもしれません。
果たして「Lemon」はそうなっているか?
確かに、音の上下は多いですね。低い音~高い音まで幅広く使って曲を作っています。それは、元々米津玄師というミュージシャンの特徴でもありますが、非常に音域が広いです。(カラオケで歌ってみるとよく分かるので、ぜひお試しアレ!)
メロディーの繰り返しも多いですね。同じような音の上がり方を繰り返すし、サビの入りの「あの日の~♪」と同じメロディーは何度も繰り返されていて、聴いているとあからさまに刷り込まれている気になります。
しかし、この曲の次の音・メロディーは、予測しやすいでしょうか?(試しに曲が開始してすぐの5秒くらいの部分と、曲が転調する2分45秒くらいを聴き比べてみてください。全く違う曲なんじゃないかと思うほどです。)
本当に「予測しやすい=耳に残る」か?
この曲は、予測しやすい曲とは言えません。短調と思ったら長調に、長調とおもったら短調に、メロディーは悲しげなのに和音は明るい、このまま行くのかと思ったら大きく転調。非常に自由奔放な印象を与えていると思います。こんな曲なかなか予測できないと思います。
でも、この曲ってすごく耳に残っているし、覚えていますよね?
つまり、予測しやすいというのは、耳馴染みが良く、すっと入り込んでくるということで、耳に残るとは言えないというのが、僕の見解です。どういうことか、次の章で説明しましょう。
テレビ時代の曲作りと音楽番組
耳に残っている曲・パッと売れた曲はたくさんあると思います。90年台であれば、槇原敬之や浜崎あゆみ。このあたりの曲はめちゃめちゃ安心感があり、良い意味で教科書どおりの音の流れです。おそらく、一度聴いただけだったり、カラオケで歌詞なしの状態でメロディーが流れてもなんとなく歌えてしまうと思います。00年台も最初は近くて、オレンジレンジや大塚愛も同じような感じです。
カノン進行という言葉をご存知でしょうか?彼らの音楽のほとんどがそれに該当します。人間が聴いていてとても自然に受け取れるコード進行の1つで、多くの人がそれを使用しています。
テレビ時代は、音楽・曲を披露する機会が多かったので、安心感・定番感のある曲が好まれる傾向がありました。音楽番組で披露するにしても、奇をてらった曲よりも定番っぽい曲に自分の色を少し足すくらいが求められていました。
しかし、ネット時代になって、コレが崩れたと僕は考えています。
ネット時代の音楽大量消費と趣味嗜好特化傾向
ネット時代になったことで、ニコニコ動画を始め多くのSNS系動画サイトに音楽が流れ出します。ここで起きたことは、「一般受け・みんな受けする曲=ありきたりでつまらない」という評価がされ始めることです。(事実カノン進行というのも揶揄される言葉の1つとして、使われていたのを覚えています。)
つまり、量産型の音楽が市場に流れる中で、いかに予想ができない曲を作り出すのかということに躍起になったわけです。その1つが初音ミク文化であり、ブレイクビーツ文化です。人間にできないことを機械を使ってやろうという人たちが新時代を作る人達として人気になったのです。
▼こっちも良ければ、
そこで育った人たちが、今やメジャーシーンへ。
ただ奇をてらったことを狙った彼らも、そのまま奇をてらい続けたわけじゃないです。
たとえば、米津玄師やtofubeats。米津玄師は、ハチとしてボカロPから始まり、tofubeatsもマルチネレコーズというブレイクビーツを主流とするネットレーベルからメジャーに活動の場を広げてきました。
特筆すべきは、彼らが90年世代、つまり、テレビ黄金時代を経験してきた世代ということです。TVから流れてくる、耳馴染みの良い王道曲を聞きながらも、ネット文化に親しんでいた。メジャーシーンの大塚愛を聴きながら、インディーズ・バンド系の王道のBUMP OF CHICKENやRADWIMPSを聴いていた。そして、実験的なNHK教育の音楽番組を聴きながら、実践する中・高時代には、ネットが徐々に力を増してきていた。
王道を踏まえつつ、ネットの奇をてらう・予想させない文化を取り入れていった結果が彼らの曲に昇華していると考えられます。
一言で言うならば、
「新しいような、懐かしいような」
いままさにテレビドラマの視聴者層の多くを締める、20~30代の人々にとって、そんな印象を感じさせる曲になっているのが、アンナチュラルの「Lemon」なのではないでしょうか。
なんとなく、中学・高校時代の帰り道、自転車に乗りながら、MDプレーヤーやMP3プレーヤーで聴いていたような気分になりませんか。
TBS系 金曜ドラマ「アンナチュラル」オリジナル・サウンドトラック
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