音楽はなんとも心地よい麻薬である。副作用は、まだない。

90年生まれの音楽好きが、好きなことを書いているブログ。基本は邦楽ロックや音楽理論や音響など音楽に関すること。たまにそれ以外も。

改めて初音ミク・ボカロ曲の原点と歴史に立ち返る。<みっくみく・メルト〜千本桜まで>

初音ミクが発売されてから、もう10年が経ちました。

 

千本桜という楽曲に至っては、もはや紅白歌合戦という舞台を経験していますし、先日バズっていたビームスの40周年記念の『TOKYO CULTURE STORY』に於いては、初音ミクが名だたるアーティストと並んでブギー・バックを歌っています。

 

このあたりで改めて、自分なりのこの10年のボカロの動きに対する考えをまとめてみます。

 

市場への導入と実験期

初音ミクは、2007年8月31日に発売されました。界隈の人々から注目されていたものの、序盤は現在でいう「歌ってみた」「弾いてみた」のような立ち位置で、有名アーティストの曲を「初音ミクに歌わせてみた」など、カバーさせる立ち位置が非常に多い状況でした。

※こんな感じです。(まだカラオケに歌声を入れるに近い。)

当時の初音ミクカルチャーは、ご存知のとおり動画投稿サイトの興隆と比例しており、日本では「ニコニコ動画」最盛期でもあったことで相乗効果を生み、多くの動画が投稿されていました。

その中で、徐々にオリジナル曲も増え、ついにあの曲が投稿されます。それが「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」です。(この弾幕とかめちゃくちゃ懐かしい。)

この曲の登場で、一気に初音ミクという存在が単なる“ボーカロイドツール”から、“1人の意思を持ったキャラクター”という存在に近くなり、オリジナル楽曲が爆発的に増えていきます。

その結果、当時衝撃とも言えるほどの曲が登場します。それが「メルト」です。おそらくですがこの曲は、“初音ミクによるポップス”というジャンルを初めて築いた曲ではないでしょうか。プロのアーティストなどの曲のカバーやボーカロイドの機能を試す実験的な曲ではなく、1つの“初音ミクの曲”を作り出しました。多くの歌い手(初音ミクの曲を実際に歌ってみる人たち)が登場したのもこの曲以降ではないでしょうか。

※ガゼルさんの歌ってみた。

 

そして初音ミクは次のフェーズへと移ります。

 

楽曲的アイドル期

メルトの登場を機に、多くのユーザーによる“初音ミクのオリジナル曲”が量産され始めます。その流れの中心にいたのはやはり、後にsupercellとしてメジャーデビューすることとなる「ryo」ではないでしょうか。“恋は戦争”“ワールドイズマイン”“ブラック★ロックシューター”などと言った曲を次々と動画サイトで公開していきます。

この時代は、初音ミクを一人称としたアイドル的な曲が異常に増えます。「〇〇P」というコンポーザーが増加し、初音ミクという架空のアイドルのプロデューサーとして活動する作曲家が登場したのです。このPには大きく2パターンあったと思います。

1つは、楽曲のアイドル性やポップ性”を重視し、“メジャー音楽シーンでも通用するような曲の制作”を追求する方向。これは、先述の“ryo”含め多くのPが目指した方向性で、「桜ノ雨」「Dear」などが該当すると思われます。


 

もう1つが、“初音ミクであるという機能性”を追求するパターンです。「初音ミクの消失」という楽曲では、物理的に人間では歌いきれない“速さ”を曲に取り込み、初音ミクでしか実現できないものとして、そのアイデンティティを確立させています。

こうして、クオリティの高い楽曲やそれを支えるPの存在により、初音ミクは完全にアイドルとしての存在を確立しました。

 

総合映像芸術の追求とアーティスト化期

しかし、Pの増加と楽曲の洗練により、初音ミクや動画サイト界隈は成熟化してしまい、差別化が難しくなってきます。

 

そうして、総合映像芸術としての側面が重要視され始めたのです。つまり、動画サイトにUPする上で、単純にカットイラストと楽曲のみでUPするのではなく、“MV”“PV”として成立する「1つの映像作品」にする必要が出てきたのです。

その代表的な作品の1つが、「炉心融解」です。(このあたりから、初音ミクに限らず巡音ルカや鏡音リン・レンも増えましたね。)

明らかににそれまでの楽曲とは異なり、映像と楽曲の親和性1つの芸術作品としての完成度が上がっています。つまり、Pにとっては、優れたイラストレーター・映像作家と組むことが不可欠になったのです。

この「裏表ラバーズ」も同様ですね。

ここまで来て、初音ミクを活用した動画サイトは1つの終わりを迎えたとボクは思っています。

 

表現の限界とボカロからの脱却期

ちょうど時を同じくして、1つの衝撃が起きます。それが、“メルト”の作曲者「ryo」率いるsupercellのメジャーデビューです。なぜこれが衝撃だったかというと、楽曲のボーカルが初音ミクではなく、歌ってみたで活躍していたガゼルを起用した“リアルな人間をボーカルとしたポップス曲”だったことです。 

君の知らない物語

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そして化物語のEDテーマとして、総合映像芸術的にも使われてしまったことで、ある種この分野は完成を見ることになってしまいました。

 

この“supercell”という存在により、初音ミクを使ったネット上の表現活動は、“初音ミクという架空のアイドルのプロデュース活動”から“コンポーザーとしての地位を確立し、メジャー化を狙うための登竜門”という方向に形を変えることになってしまったのです。

 

サブカルチャーからメインカルチャーへの浸透期

こうして初音ミク文化は、ネット上のサブカルチャーから、メジャーシーンでも普通に見かけるようなメインカルチャーへと変貌を遂げます。

 

カゲロウデイズは、小説化・漫画化・アニメ化され、

 

千本桜は紅白で小林幸子に歌われ、

 

※BUMP OF CHICKENとコラボし、

 

※ついには、BEAMSの40周年MV『TOKYO CULTURE STORY』に登場します。

 

こうして、ネット上のオタク界隈のものとして忌避されたこともあった初音ミクは、フツーに誰でも知っている一般的なものへと受け入れられるようになったのです。

 

最後に

これは僕の考え方なので、他の人から語らせれば、別の視点もあるかも知れません。しかし、こうしてニコニコ動画などを基盤としたネット世界の1つのカルチャーが生まれ、徐々に大きくなりながらメインカルチャーへと変貌を遂げていった流れを振り返るのってとてもおもしろくないですか?

 

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